Indusi と PZB について(1)

概要

Indusi と PZB はドイツを中心とした欧州各国で配備されている列車保安装置のひとつです。Indusi は 1934 年にドイツで開発されました。Indusi という名前は Induktive Zugsicherung に由来します。現在では車上の制御装置がコンピューター化されており、高速線区向けの LZB と対比して PZB(Punktförmige Zugbeeinflussung)と呼ばれています。

主な機能は停止信号や踏切に対する列車の自動停止機能ですが、線路の速度制限に応じた速度照査を設定することもできます。

変周式地上子を用いているので、信号現示などの情報は線路に設置された地上子から車上に送信される点制御方式です。現行のシステムでは車上に搭載されたコンピューターで連続的に速度照査することができます。日本の ATS-S 形の車上装置を強化したようなシステムです。

まず、この記事では Indusi、PZB で用いられる地上子について説明します。

地上子

地上子は進行方向に向かって右のレールの外側に設置されています。Indusi、PZB システムは何度も改良され多くのバリエーションがありますが地上設備に違いはありません。

変周式地上子ですので電源を必要とせず、従来の機械式(腕木式)の信号機に設置することが容易になっています。信号機の現示に連動して共振回路の接点が開いたり閉じたりします。接点が開いていると車上装置が反応します(活性状態)が、接点が閉じていると車上装置は反応しません(非活性状態)。

地上子の共振周波数は 500、1000、2000Hz の 3 種類です。速度照査や運転操作の詳細については別途説明したいと思います。

2000Hz 地上子

2000Hz の地上子は主信号機のある地点に設置されています。停止信号相当の現示がされているときに活性状態となり、通過した列車には直ちに非常制動がかかります。

次の地点に設置されています。

  • 主信号機
  • 入換信号機 ※ ただし、列車の発点、着点となる場合

そして、次の場合に活性状態になります。

  • 主信号機の Hp 0 ※ Zs 1、Zs 7、Zs 8 が現示されていても活性
  • 入換信号機の Hp 0、または Sh 0 ※ ただし、列車の発点、着点となる場合

500Hz 地上子

500Hz の地上子は主信号機の手前 200 ~ 250m の地点に設置されています。停止信号相当の現示がされているときに活性状態となります。通過した列車は速度照査され、規定の速度を超えている場合には非常制動がかかります。

500Hz の地上子は主信号機によって制御されるので活性状態になる条件は 2000Hz の地上子と同じです。

1000Hz 地上子

1000Hz の地上子は遠方信号機のある地点に設置されています。主信号に停止信号相当の現示がされているときに活性状態となります。通過した列車は、4 秒以内に運転台の Wachsam(警戒)スイッチで確認操作をする必要があり、その後速度照査されます。確認操作をしなかったり速度照査で規定の速度を超えている場合には非常制動がかかります。

次の地点に設置されています。

  • 遠方信号機
    ※ 中継信号機は除く。つまり Ne 2(Vorsignaltafel)が併設されている遠方信号機。
  • 遠方信号機がない単独の Ne 2(Vorsignaltafel)
  • Überwachungssignal
    ※ Überwachungssignal は踏切の手前に設置されている信号機。Bü 0、Bü 1 を現示する
  • 70km/h 以下の制限の Lf1(Langsamfahrscheibe)、Lf 4(Geschwindigkeitstafel)、および Lf6(Geschwindigkeits-Ankündesignal)

そして、次の場合に活性状態になります。

  • Vr 0
  • Vr 2
  • Vr 2 + Zs 3v
    ※ ただし、速度制限が 70km/h 以下の場合
  • Ks 2
  • Ks 2 + Zs 3v
    ※ ただし、速度制限が 70km/h 以下の場合
  • 遠方信号機がない単独の Ne 2(Vorsignaltafel)は常に活性
  • Bü 0
  • 70km/h 以下の制限の Lf1(Langsamfahrscheibe)、Lf 4(Geschwindigkeitstafel)、および Lf6(Geschwindigkeits-Ankündesignal)は常に活性

1000Hz / 2000Hz 地上子

主信号機と遠方信号機が同じ場所に設置されているなど、停止信号と注意信号を現示できる場合は、1000Hz と 2000Hz を切り替えて活性化できる地上子が設置されています。

時素式照査のための地上子

主信号、遠方信号以外の速度制限で任意の速度で速度照査するために時素(タイマー)と組み合わせて地上子が設置される場合があります。

タイマーを開始する地上子、1000Hz または 2000Hz の地上子と、状態をリセットする地上子の 3 つ 1 組みで設置されます。

時素により 1000Hz もしくは 2000Hz の地上子の活性状態を切り替えることで列車の速度に応じてブレーキパターンを発生させたり非常ブレーキをかけたりすることができます。

日本の ATS-Sn 形の地上時素方式の速度照査と同様のものとなっています。

次の場合に設置されています。

  •  80km/h 以上の制限の Lf1/Lf2、Lf4/Lf5、Lf6/Lf7、および Zs 3v/Zs 3

おわりに

記事を書き始めたのがもう 4 年も前のことで参考文献は漏れがあるかもしれません、すみません。続き書けるといいな…。

参考文献

  • Carsten Hölscher: Zusi 3 Dokumentation, 2018
  • Stefan Carstens: MIBA-Report Signale 1, Verlagsgruppe Bahn, 2007
  • Wolfgang Meyenberg: www.sh1.org (http://www.sh1.org)
  • Ril 301 Signalbuch, Aktualisierung 9, DB Netz, 2016
  • Ril 483.0101A01 PZB-Streckeneinrichtungen, DB Netz, 2014